SSJスタッフブログ
-
2022.6.29
TEXT BY 山田一竹ムハンマド・スラージュシリア−11年の軌跡と夢の重み
「民衆は政権の打倒を望む」。
シリアの人びとがアサド政権による独裁支配に対し立ち上がってから、すでに11年が経過した。2011年3月、「アラブの春」の高揚感に世界が包まれる中、恐怖と希望を胸に路上に繰り出した無数のシリアの人びとの姿はこの11年で大きく変動した。
権力にしがみつく一国が、人権や平和の概念という国際秩序を完全に無視して民衆を殺戮し続けるというシリアの地獄絵図は世界に戦慄を与えたかと思えば、その異常事態を今日まで許容し、武器を取り抵抗せざるを得なかった市民側が「テロリスト」と糾弾されるという、さらなる異常事態へと発展した。そして国際法違反の限りを尽くし、国際刑事裁判所が規定するコアクライムである人道に対する罪や戦争犯罪の責任を負うバッシャール・アル=アサドは今日もシリアの大統領としてシリアを統治する。 -
2021.6.30
TEXT BY 山田一竹ムハンマド・スラージュ広義のジェノサイドの発現を巡る一考察-シリア革命における民衆の殲滅を事例に-
シリアにおけるこの異常以外の何ものでもない人権侵害状況に対する学術的問題意識と共に3年間の研究調査と起草の後、私はようやく東京大学からジェノサイド研究を専攻する修士号を取得した。 184ページにおよぶ修士論文、「広義のジェノサイドの発現を巡る一考察―シリア革命における民衆に対する殲滅行為を事例に―」は、“自由”、“正義”、“尊厳”を信じるすべてのシリア人へ捧げられる。
今日、私はシリア政府による拷問システムとそのメカニズムのいわゆる「専門家」になった訳だが、これは私の人生で最も幸せであり、最も悲しい瞬間だと言える。 このおぞましい研究分野で3年間の調査を行なった私の心境を、少しだけここに記したいと思う。この3年間が私に与えたのは、極限を超えた痛みと悲しみ、そして、限りない希望と尊厳である。