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開催報告:革命8周年記念特別シンポジウム 

開催報告:革命8周年記念特別シンポジウム 

【開催報告:革命8周年記念特別シンポジウム】

3月23日(土)、革命8周年特別シンポジウム「自由への道のり。真の解放を求めて」は90名を超える方にお越しいただき、盛会のうちに閉幕いたしました。

当日は、シリア危機8年を振り返り、シリアの人々の現在と未来について考える大変有意義な機会となりました。

以下、当日の詳細な報告となります。

 

-トークセッション-

第一部 革命
・「サウラの記憶:沈黙と恐怖の壁を超えて」 山田一竹(SSJ代表)

SSJ代表の山田一竹が登壇し、シリア革命の経緯やその精神性と意義について解説を行いました。

まず、二代にわたるアサド政権時代について解説いたしました。ハーフィズ・アル=アサド政権時代については、秘密警察が政府に都合の悪い対抗勢力を恣意的に逮捕、拷問していた事実を伝え、たとえ家の中でも安心することができないほどの徹底的な弾圧時代を振り返りました。恐怖が社会に染みついていたこの時代は、反政府活動を行う者たちは、政府による大弾圧を受けていたことも紹介されました。次に、バッシャール・アル=アサド政権時代についてです。当初は前政権に比べ穏やかなな政治を行っていたものの、結局は強力な独裁体制となっていった経緯について明かしました。山田は、特にこの時代の市民社会の動きに触れ、民主的な政治への改革を目指す結社組織、人権団体の結成など草の根における変革が進んでいたことを説明しました。恐怖、抑圧、汚職と腐敗、そして貧困が蔓延るこの時代に、すでにシリア革命の要素が出来上がっていったと指摘しました。

続いて、シリア革命そのものの解説に移った山田は、革命の意義と精神について、「シリアの人々は一つ」という2011年初期におけるデモのスローガンを取り上げ、様々な垣根を超えた人々がそれぞれの専門分野や得意分野を活かして革命の支援を一丸となり担ったことを説明しました。そして、革命は、「無私無欲」であり、「抑圧されるすべての者への連帯」がエッセンスであったったことが解説されました。

そして最後に、「サウラ(革命)の記憶」、すなわち残された人々の記憶はすべてが破壊され行く中でも、シリアの人々が最後まで「人間」であろうとした証となり、アサド政権に対する最大の武器になりうると結びました。

 

・「<内方浸透>に抗うシリアの記録映画」  岡崎弘樹氏(アラブ近代政治思想、シリア文化研究者)

岡崎弘樹氏よりシリアの記録映画についてご講演いただきました。

まず、日本の国策映画について触れ、数本の作品を紹介し、日本でもドキュメンタリーの形態が戦前戦後で変遷してきたということについてご説明されました。

次にシリアの記録映画についてご解説いただきました。幾つもの実際の作品を引き合いに出しながらのご解説は詳細でいながらも非常に分かりやすいものでした。

実際の話(現実社会での話)と演技を混合する手法や、あえて違和感を見せるという手法等様々な技法が見受けられる20世紀後半の記録映画から、2000年代のシリアにおける市場開放に伴うインターネット、衛星テレビ等の普及により映像業界がそのものが変化したことをご説明されました。現在にかけては、技術の発展、スマートフォン、ハンディカメラなどの普及に伴い、それで撮られた映像などが世論に影響を与えることがあること、またプラカードにアラビア語だけでなく英語の表記も加えるなど革命の“方法”が変化していることについても述べられました。しかしネットにあげられる情報は断片的であり、それがどのように取り上げられるかによって、映像の意味が変わってしまうことには注意が必要だと主張されました。

最後に、シンクタンクや専門家によって特定の利害とともに生み出された知識がマスメディアを通じて確かな情報と偽の情報とともに我々の日常生活に入ってくる「内方浸透」が起きていることについて触れられました。また、ドキュメンタリーは“内方浸透”に抗い、人々がなぜ武器を取ったかについて論理的に伝える一番良い手段であると指摘されました。自由が若手の才能を伸ばすこと、長い歴史を持つシリアには伝統や文化に裏打ちされた技術力、発信力があること、日々のニュースより映画は実際に生きている人について知ることができる手段であることを強調され、シリアの記録映画をたくさん見てほしい、既存のシナリオ以外のものを知ってほしい、とご講演を締めくくられました。

-特別登壇企画-

・「革命は決して終わらない -The Revolution will never Die-」
リーナ・シャミー氏特別登壇:モデレーター/通訳 山田一竹|山崎やよい氏

 

世界的に著名なシリア人アクティビストで建築士のリーナ・シャミー氏にスカイプを通じて特別にご登壇いただきました。アレッポでの地獄を目の当たりにしたシャミー氏が語る言葉の一つ一つが重く、私たちに問いかけてきました。

まず初めに2011年に革命が発生した際の状況についてお話いただきました。アレッポにいたシャミ―氏は「表現ができる自由」というような感覚を感じていました。アレッポは非常に活発に革命を支持し、市民が独自に自由な社会を構築し始めたといいます。しかしその後、だからこそアレッポはアサド政権による激しい攻撃の標的となりました。

「シリア危機は皆さんが思うより本当にひどいものだった」と訴え、アレッポ包囲下の状況について説明されました。食べ物がなく、インフラや医療活動も停止され、毎日のように組織的な空爆があり虐殺が続いていたといいます。包囲の終盤には空爆があまりにも激しくなったため、誰も動けず、救助にあったていたホワイト・ヘルメット隊員ですら、がれきの下から遺体を運び出すことができない状況であったと述べられました。状況は日に日に悪くなり、「非人道的な虐殺が何度も起こっていた」と語られました。

 

2016年冬、アレッポで過ごした最後の日について、シャミ―氏は空爆によって祖国や同胞が破壊されていくのを眺め、率直に「悲しく思った」といいます。同時に、自由、尊厳、正義を求めただけの市民が殺されていくという現実に、不正義と抑圧という感情を感じたそうです。また、「最後の日ほど、故アレッポを愛おしく思ったことなどなかった」、「無理矢理、強制的にアレッポを出て行かされたその日は人生で一番辛い日となった」と述べられました。「革命から8年。革命など起きなければ良かったという声も聞こえるが、リーナさんは革命を今どう思っているか?」という山田と山崎氏の問いかけに、革命が起きるまで私の人生は存在していなかった。アサド政権下という牧場で飼いならされている羊であった私たちは、革命が起きた時、「私はシリア人である、シリアに属している、そしてシリアもまた私たち国民に帰属している」という感情を抱くことができたと語られました。

シャミー氏は、故郷シリアへの想いについては、「いつでも帰りたいと思っているし、そのための準備を毎日している」と述べ、拘禁者が解放され、アサド政権がいない、表現の自由が約束され、誰にも占領されていない故郷、シリア人が自身の運命を決めることのできるシリアに帰りたいと述べられた上で、そのためにもアサド政権の犯した重大な戦争犯罪を決して看過してはならないと強く主張されました。「自分を危険にさらしてまでどうして革命を支援し続けるのか」という問いに対しては「革命が私に生きる意味を与えてくれたのであり、シリアで起きた事から背を向けることはできないし、アサド政権の罪について誰も言及しない中、多くの友人が革命で亡くなっていった中で彼らの死を無駄にすることは決して出来ないのです」と訴えられました。その後は会場との質疑応答に移り、会場からは多くの質問があがりました。

トークの締めくくりとして、シャミー氏はシリア市民の声に耳を貸すことが重要であり、シリアの人々を気にかけることがシリアの人々の「支援」になると述べられ、シリアの人々が語る真実を聴いてほしいと強く訴えられました。「シリア人は時々1人なのではないかと感じるが、ここに集まってくれた皆さんのおかげでそうでないと感じられた、誰かが “Care”してくれることで私たちは人間性と正義でつながることができるのです。このような機会を与えてくれて心から感謝します」

 

第二部 内戦

・「失われた故郷:アレッポで見たもの」  藤原亮司氏(ジャーナリスト、ジャパンプレス所属)、山崎やよい氏(考古学者|イブラ・ワ・ハイト発起人)

藤原氏、並びに山崎氏よりアレッポ社会と内戦下の様子についてご講演いただきました。

まず、山崎氏からアレッポ社会についてご講演いただきました。ご自身の23年に及ぶ在住経験に基づき、アレッポは市の中心にお城のあるとてもきれいな街であり、常にアットホームな雰囲気であったとご説明いただきました。アレッポは共存の町であり、いろんな利害関係をもちながらも人々が一緒にいることのできる場所であり、シリア人の家ではドアはいつでも開かれていて柔軟性のある人が多かったと説明されました。しかし、その一方で腐敗、強権体制からの恐怖、密告の雰囲気もまた常に街の中にあったということです。

山崎氏は「革命を自分事」として、シリアを遠い国の話でなく近い話としてとらえてほしいと述べられ講演を締めくくられました。

次に藤原氏のご講演に移りました。まず初めに、シリア社会についてシリアは政府に否定的なことを言うとすぐに拘束された密告社会であったということが明かされました。次にシリア情勢の報道について、著名なジャーナリストすらもフラットに物事を見ておらず、各国のシリアに関する報道はことごとく間違っていると強い主張をなされました。

ご自身の2012年の取材の様子を映像を用いてお話いただきました。アレッポの町ではどの地域に行っても戦闘機が飛んでおり、攻撃を仕掛けてきたことをご説明されました。反体制派に外国人ジャーナリストが取材することは可能だったという取材背景もご説明いただき、反体制派を治療した医療関係者が拘束、殺害され、病院自体もが空爆の標的と振り返られました。

最後に、藤原氏はシリア危機に関する「政権も反体制派もどちらも悪い」という意見に触れられ、どんなことがあっても強力な勢力、すなわち政権側が残虐非道なことをしてはいけないと主張され、そのような状況を強く批判されました。

 

・「報道と真実」  黒井文太郎氏(軍事ジャーナリスト)

トークセッションの最後は軍事ジャーナリスト黒井文太郎氏より、シリア内戦におけるプロパガンダとどのように情報を精査するべきかについてご講演いただきました。

まず、シリア情勢については主に二つの論調があることが指摘されました。一つは「アサド政権擁護論」で、反体制派に問題がある、そのバック(後ろ盾)のアメリカが悪いという論調で、もう一つは「アサド政権に対する反対論調」で、そのバックのイラン、ロシアを批判するものです。それだけでなく、両方が悪いという「どっちもどっち論」やISに関する論調もあることが詳細に説明されました。これらの論調について黒井氏は、「個々人の意見は自由だが、考えのもとになる情報は常に正しくなければならない」と強く主張されました。アサド派も反体制派も両方が情報戦を行っており、それぞれが自身らに都合のいい情報を流しているということが指摘されました。そのような状況の中で、情報の取捨選択のポイントとしてはどちらがより情報を隠しているかを見ることが一つの鍵となると述べられました。またSNS情報をどう見るかも難しい問題であると述べられ、権威のあるメディア(多くが政権側)を重視するのか、たくさん流れてくる情報を取り入れるのかを考える必要があると述べられました。膨大な量の中から使える情報のみをくみ取れるかがポイントであるとも話されました。その後、フェイクニュースメディアと、信ぴょう性の高いメディア(ファクトチェックを行っている)のそれぞれの具体例をご提示いただきました。

 

第三部 ディスカッション
「徹底討論:シリアはどこへ向かうのか」

岡崎弘樹氏×黒井文太郎氏×藤原亮二氏×山崎やよい氏×ナジーブ・エルカシュ氏×山田一竹

ここからは、モデレーターを山澤宗市(SSJ理事)が務め、重大で緊急性の高いトピックに沿って登壇者の方々が意見交換をするディスカッションの時間となりました。

まず初めに、シリア人ジャーナリストのナジーブ・エルカシュ氏に今回のシンポジウムの感想をお話しいただきました。日本からシリアの民主化を支援する側の知的勢力の有能さについて触れられ、今回のシンポジウムを開催した山田に感謝を示すとともに、今後シリアを動かしていき、国際社会で役割を果たしていくのは政権ではなく、シリア市民であると述べられました。また、山崎氏もシリアの人々は国を支える力があるというエルカシュ氏の意見に賛同され、コミュニティレベルで教育委員会を発足するなど、現在もシリア国内において次の時代を育てる取り組みが行われていること述べられました。

次に「アサド政権ではない場合、どの勢力ならシリアで平和を作れるのか」という議題に対して、藤原氏はいろいろな勢力がいてそれらをどのようにまとめていけるのかが分からないというのは非常に難しい現実であるということが述べられました。同じ質問に対して黒井氏はアサド政権はたくさんの人を殺したので彼らが今後も政権を持つことは困難であると考えるが、シリアの将来については現時点では明確にすることは難しいと述べられました。

「シリアへの軍事介入」については、藤原氏が外国の介入が良いわけではないが、アサド政権を看過してはならないと指摘されるとともに、シリア内戦は大国の代理戦争ではなく、アサド政権が市民を殺害しているという人道的な危機ではないかと主張されました。また、軍事介入によって状況が悪化する可能性という山澤からの問いかけに対しては、山崎氏が、情勢が悪化している現在においてその意見は真実味を持たないと述べられました。ナジーブ氏は、アメリカの軍事介入を望んでいる人が100%悪いとは思わないし、反米が正しいわけでもないと話され、岡崎氏は大きな政治構造についてまず問題があり、より大きな枠組みでの議論をするべきであると主張されました。

次に日本の政権擁護の環境についての議論に移りました。これに関してはまず山田が、SSJはしばしば政権に反対する立場から批判されており、先週の対談のセミナーの際にはSSJのFacebookポストが次々とスパム報告され削除されたことによる妨害の事実にも触れました。山崎氏は、自身のシリア在住経験やシリア人女性支援活動についてお話されるとともに、一方的に市民が悪いと決めつけられてしまうのは看過できないと述べられ、藤原氏は情報の受け手側として、情報を精査して、考えなければならないと主張されました。そして、黒井氏からは日本では政権反対の情報が2011年の時点から少なかったという事実を指摘が出されました。また、黒井氏から登壇者へ復興について問いかけがありました。ナジーブ氏は日本からの金銭的支援がどのように使われるかということを考えてほしい、またその金銭的支援の用途の透明性を改善するべきだと意見を出されました。

最後にディスカッションの話題はシリアの人々の革命に対する意識に移りました。山崎氏は、国外にいるシリア人の方々には使命感と罪悪感があると述べ、私たちはシリアの人々への「精神的支援」が可能であると思うと指摘しました。岡崎氏はシリアの若者が「何かやってやろう」という意欲があり、彼らを見るとシリアには将来を担う人材がいくらでもいると思うと述べられました。最後に山田が、私たち一人ひとりがシリア人に対するケアをすることで、彼らが将来への希望を失わないでいられると述べディスカッションは締めくくられました。

その後の質疑応答では、会場の質問を踏まえて、さらなる議論が交わされました。

 

閉会挨拶

閉会挨拶では、山田より、革命に立ち上がり犠牲となった人々に対して「30秒の黙祷」が呼びかけれ、会場において追悼が行われ、8年という歳月の中で亡くなられた人々の命と想いを馳せる時間となりました。

 

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SSJでは、年に2-3度シンポジウム(セミナーではなく大きなイベント)が企画さています。今回の特別シンポジウムが、2018年度最後のシンポジウムとなりました。約100名の多くのお客様にご来場いただき、SSJ一同ご来場いただいた皆様に心からの感謝を申し上げます。

本シンポジウムで、ご登壇者の方々が口になさったようにシリアの人々を「気にかけること」、「彼らに寄り添うこと」がシリアの人々の未来を支える何よりも強力な「支援」となります。今回のシンポジウムにご来場いただいた方、このレポートをお読みくださった方、皆様、どうか私たちと共に今後もシリアの人々へ寄り添いつづけてください。

 

ご来場いただいた皆様、また、本イベントの情報拡散くださった皆様、重ねて心よりお礼申し上げます。ご登壇者の皆様、運営ボランティアスタッフにもこの場をお借りして感謝を申し上げます。

そして、本シンポジウムは、自由、正義、尊厳という「人間としての権利」を求める革命(サウラ)に立ち上がり犠牲となったすべてのシリアの人々に捧げられます。

2018年3月30日

Stand with Syria Japan

We are an Non-Profit Organisation focuses on a series of “Syria Crisis” which have been continuing since 2011 that supports all Syrian civilians who are affected by the crisis. Strictly non-profit, apolitical, non-religious organization, led purely by the Sense of Humanity. * An official member of J-FUN (Japan Forum for UNHCR and NGOs) 私たちは2017年4月に発足したStand with Syria Japanは、シリアに寄り添うためのNPO法人です。 当団体の活動の全ては非営利・非政府・非宗教目的で”The Sense of Humanity”により運営されています。 *J-FUN(Japan Forum for UNHCR and NGOs―日本UNHCR・NGO評議会)加盟団体です。

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